珠洲ってこんなところ
日本海のほぼ中央に突き出た能登半島の先端に位置し、三方を海に囲まれた珠洲市は、人口約15,000人の小さな市です。県庁所在地である金沢市まで約134km、車で約2時間と交通の便はあまりよくありません。しかしながら、そういう地域だからこそ、美しい自然豊かな景観が自慢です。
荒々しい岩礁海岸の外浦と、波穏やかな砂浜の内海という二つの海を持つ海岸線一体は、能登半島国定公園に指定されています。サバ尾岩、ホタテ岩、ゴジラ岩、島の形が軍艦に似ているところから別名「軍艦島」とも呼ばれる高さ28mの奇岩、能登のシンボルとしても有名な「見附島」を見ることができます。
また、黒瓦と板壁の家が軒を連ね日本の原風景を感じさせる町並みが今も残っています。豊かな自然の中で育まれた固有の文化も多く、製塩業や珠洲焼、埋蔵量が日本一といわれる珪藻土を使った七輪などの伝統産業のほか、「飯田燈籠山祭り」や農耕儀礼「あえのこと」をはじめとする各地のお祭りなどの地域文化が受け継がれています。
珠洲に住む人々には、昔から良いもの、ほんものを大切にする心が根付いているのです。
日本で唯一、約400年間受け継がれてきた揚浜式製塩
慶長元年(1596年)から珠洲の仁江海岸で受け継がれてきたこの製塩法は、塩田と呼ばれる砂上に海水を撒き天日で乾かします。その砂を集めて海水をかけると砂の表面についた塩分が落ちて濃い海水ができます。それを釜で煮詰めて結晶にするものでミネラルを多く含むまろやかな塩ができあがります。
市内各集落では、9月から10月にかけてキリコと呼ばれる高さ約6mから約16mの大きな奉燈が町内を練り歩く秋祭りが盛んに行われます。また、江戸文化の華を伝える貴重な早舟狂言やドテラ姿に鈴をつけ、化粧まわしをした若者たちが威勢のいい掛け声をかけながら、シャンガと呼ばれる毛ヤリを振りながら町中を練り歩く奴振りがキリコ祭りにあわせて行われます。
里山里海は希少生物の宝庫
珠洲の里山には希少な生物たちが多数生息しています。里地のため池にはシャープゲンゴロウモドキ、マルコガタゲンゴロウなどの水生生物、ハマドクサ、サンショウモ、ジュンサイなどの水生植物、オジロワシ、ヒシクイ、マガンなどの鳥類等々、珠洲は全国的にも絶滅が危惧されている生き物たちの宝庫です。
このように長い歴史を持ち、固有の生物多様性とそれを利用した伝統文化を育んできた宝達志水町以北の4市5町は「能登の里山里海」として2011年に世界農業遺産に認定されました。